インターネットのできる公共施設が最近増え、とある地方都市の市民センターにも、ADSLの使えるPC4台が設置された。
渡部文昭はそのうわさを聞きつけると、早速駅前にある施設へ足を運んだ。
文昭は25才。どこにでもいる一人暮しのフリーターである。
インターネットが好きでたまらず、ADSL回線をアパートに引いていたのだが、仕事にありつけず通信料を滞納し、先日とうとうプロバイダに回線を止められてしまったのだ。
やむなくネットカフェに通ったのだが、仕事もろくにない身では経済的負担が非常に大きかった。
やむなく食事代を削ってまでネットカフェに通っていたが、それでも文昭には苦しかった。
そこへこの知らせ。
聞くや否や文昭は喜び、まるで足に羽根が生えたように施設へと向かった。
こじんまりとした、いかにも役所といった施設に入ると、文昭は受付へと向かい手続きを済ませ、施設の隅の、ブースに囲まれたインターネットコーナーへと足を向けた。
コーナーは、割に大きめの白い丸テーブルが置かれていて、その上に4台のデスクトップPCが対角線を描くように設置されていた。すでに2人が席に着いていた。
一人が若く地味な感じのする女性で、もう一人が50代くらいのメガネをかけた男だった。
昼過ぎに来たので、そんな男がなぜコーナーにいるのかと文昭は思ったが、それ以上は考えずに、二人の間に入るように席へと着いた。